新聞を抜いたインターネット広告費
先月2月22日に電通が発表した「2009年日本の広告費」によると、インターネット広告費(7,069億円)が新聞広告費(6,739億円)を上回りました。
ついにと言うよりは、予想通りの結果であり特に驚くということはなかったのではないでしょうか。
Internet Advertising Bureau (IAB) の調査によると、英国では2009年上半期には、テレビ広告をもインターネット広告が上回っています。国営放送BBCの強さやブロードバンドの普及などの理由があるかと思いますが、注目すべきニュースです。
私自身、以前、新聞業界にいたこともあり、ここ最近、関係者の方々とこの話題について話すことが多かったので、今月はSEOを離れてこの話題に触れてみたいと思います。
2009年日本の広告費
まずは、電通発表の「2009年日本の広告費」をざっと見てみましょう。
2009年の総広告費は前年比88.5%の5兆9,222億円、「マスコミ四媒体広告費」は軒並み下げ、「テレビ広告費」は前年比89.8%の1兆7,139億円、「新聞広告費」は前年比81.4%の6,739億円、「雑誌広告費」は前年比74.4%の3,034億円、「ラジオ広告費」は前年比88.4%の1,370億円でした。
一方、「インターネット広告費」は前年比101.2%の7,069億円と、前年比プラスではあったものの、ここ数年2ケタ台の伸びを続けていた成長率は鈍化しました。
微増ではあるが、前年比プラスととなった「インターネット広告費」の内訳を見てみると、検索連動広告やモバイル広告が前年比を伸ばしたが、バーナー広告・テキスト広告・Eメール広告などの固定ネット広告は前年比6.2%減となっています。
インターネット広告費は伸び続けるか
「マスコミ四媒体広告費」の落ち込みは、2008年秋のリーマンショック以降の世界同時不況を背景にするところが大きく、広告費が削減される中、広告主たちが、より費用対効果を重視した結果、「マスコミ四媒体広告費」から「インターネット広告費」へと予算がシフトされていったのでしょう。
今後も費用対効果が高いと認知されたインターネット広告は利用が増えることが予想されます。特に、「モバイル広告」の伸びは大きく、スマートフォン市場の拡大が予想される今後、さらなる伸びが期待されています。
2009年の「インターネット広告費」は1.2%増と微増でしたが、代理店などの関係者間では、インターネット広告に関しては2009年が底であると見る人も多く、今後しばらくは伸び続けていくことでしょう。
費用対効果とは別に、もう1点、インターネット広告の特徴をあげるとすると、広告主の層があげられるのではないでしょうか。テレビ・新聞広告を支えているのが、大手広告主であるのに対して、インターネット広告では、中小広告主から大手広告主まで幅広い層によって支えられています。
月々数万円の広告費で成果を出すことが可能なインターネット広告は、中小広告主にとって魅力ある広告媒体であるはずです。しかし、現状では、中小事業者によるインターネット広告の利用はまだ少ないことなどから、今後の伸び代に期待されます。
新聞業界に未来はあるか
5年程前の新聞業界関係者の多くは、先ほどの大手広告主によって支えられていることからの安心感から、インターネット広告に新聞広告が抜かれることを心配する人は少なく、広告主の層の違いを語る人が多くいたものでした。
しかし、購読者数の減少は2000年頃より数字に現れはじめ、この問題には早くから取り組んでいたのですが、時代による新聞離れに対する成果はなく歯止めをかけることはできませんでした。
広告収入の落ち込みはたしかに新聞社の経営に影響を与えているかもしれませんが、実は現在の新聞社を支えているのは新聞購読料なのです。朝日・読売が夕刊を廃止せず、販売網である販売店に補助を出しながら支え続けるのは、そのためでしょう。
新聞社がネットに力をいれ成功すればするほど、この新聞購読者数が減ってしまうというジレンマこそが、一番の問題なのでしょう。
最近、日本経済新聞社が「電子新聞」を創刊しましたが、「紙の部数に影響を与えない」価格として、月額4000円という価格設定をしてきました(紙媒体と併読する場合、「紙媒体+1000円」)。
日経が朝日や読売に比べ読者層や新聞を読む目的が異なることなどを加味しても、やはり、この価格設定は高い気がします。
新聞社が紙の読者数を減らさずに、代替メディア(電子新聞やインターネット)を成功させることは難しいでしょう。
そういえば、以前に比べ、最近はテレビも見なくなりましたね。新聞を取る理由の1つに、昔はテレビ欄というのもあったのですが、テレビまで魅力を失っては、ますます新聞を取る理由がなくなってしまいます。